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夏目漱石の作品を眺めていると、先人たちが築いた近代国家としての明治に、思いを巡らすことがある。
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そのたびに感じるのは、多くの漱石論が、その行き着く先を現代にまで至る国家論や思想史に求めて、頓挫してしまうということである。
そこには、多くの議論の熱量があるように思う。
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漱石文学の一読者にすぎない私は、その先へ踏み込もうとは思わない。
体系的な解釈を探すには、私には深すぎる。
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けれど、自分の現在と将来の立ち位置を確認するために、日本の近代を学び直し、見つめ直す。
それくらいなら、私の背丈でもできそうだと感じる。
批判でも肯定でもなく、あらためて見直すのである。
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江戸期の朱子学や国学などの思想の流れを受けて、それまで長い間、祭祀を担い、権威を付与し、あるいは秩序の焦点にあった天皇が、近代国家の表に戴かれた時代。それが明治だったと思う。
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天皇は、現在の制度上は象徴だが、日本人の感覚の奥底では、それだけでは割り切れないものがある。
象徴という言葉の外側に、祭祀や権威や秩序、あるいは自然崇拝や神仏習合のような古からの精神の熾火に、天皇の存在は繋がっているように思う。
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我々は明治維新史を、個人の偉業が連なった英雄譚のように捉えてしまいがちである。
それは、喉越しはいいが、その時代の歴史的運動がなぜそのように収斂していったのかを、見誤ってしまう。
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近代を学び直すことは、現代の国際的立場を考える一助にもなると思う。
アメリカの隷属国という考え方はある。
けれど、日本の国際的な立ち位置はそこだけではなく、国際秩序の維持や開発援助のために、相応の資金を供出してきた国であるようにも思う。
しかし、その秩序が時として、一方向に傾いだものであることも、受け止め、見つめなければならない。
そうして、その負担によって、いま国民生活が荒れ、傷んでいることも見落としてはならない。
それらは決して看過することのできない問題である。
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けれども、内向きの政策だけでは一国の経済を支えることができない時代でもある。
国際的な経済連携を避けては通れず、国際社会の中で一定の立ち位置を保つことも、国家には欠かせない。
自国第一を掲げる現在のアメリカ政権でさえ、国際的な安全保障への関与から、完全に退くことはできていないように見える。
日本もまた、国際社会との関わりを避けては、立ち続けていられないのだろう。
必要なのは、自国を傷めない限度を保ちながら、国際社会の中で立ち位置を失わないよう、均衡をはかってゆくことなのだと思う。
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だからといって、軍事を自分たちの手に取り戻せば、国民の生活が修復されると考えるのも、一等国に復帰できると考えるのも、早計に感じてしまう。
日本は、天然資源の多くを海外に依存している。
切り札として使い続けてきた資金力は、いま痩せつつある。
そうして、この先仮に、アメリカの国際的影響力が陰ったとしても、新興国家の覇権を世界がすんなり受け入れるとも思えない。
多くの国どうしの経済、資源、宗教、民族などをめぐる地政学上の摩擦や擦り合わせが、数十年、あるいは百年を超える時間の中で続いてゆくと考えるほうが良いだろう。
その中で日本が考えるべきは、大国への復権ではなく、自国の内側を崩さないことではないかと思う。
文化や民生を守り、統治を傷めず、社会を荒らさないことに、目を向けるべきではないだろうか。
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そのためにまず必要なのは、外交・安全保障に用いられている公的資金のあり方を、主権者である国民の目に触れるようにすることだと思う。
現在の政治は、それを国民に分かる形で知らせることを、あまりにも怠っている。
政治家や官僚の言語に閉じるのではなく、我々国民が感覚的に理解できる言葉と形で、予算とその執行を確かめ、検証できる仕組みを整えなければならないのだと思う。
そのうえで、日本とアメリカとの関係の将来像を考え直し、修正してゆく力の根となるのは、日本国民の意思でしかないだろう。
けれども、現時点の日本を取り巻く地政学上の状況では、日米安保体制を前提にする方が、現実的であり、かつ堅実であるように感じる。
日本が単独で、極東の緊張の均衡をはかり、その上で自国の安全保障を維持するのは難しいだろう。
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日本の近代化の歩みをあらためて見つめ直してみると、日本人がいまどこに立っているのかが、思いのほか見えてくるように感じる。
内政も、日本人の精神も、そして国際的に担い続けてゆくものでさえ、その歴史のうちに潜んでいるように思う。
見落としてきたもの、あるいは見誤ってきたものが残されているように感じる。
大仰な国家論や思想史を追うのではなく、また、他国との比較のうちに収めるのでもなく、近代の先人たちの背中を見直してみると、そこには、自国の政治や信仰観、社会意識を再検証する手がかりが隠れているのではないかと思う。
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