詩文 詩に眠る ∽∽彼女はおとなしくて、口数が少なかった。喋るのはたいてい彼のほうで、彼女は黙って、ずっと聞いていた。けれど、言葉がうつむいて、立ち止まってしまうと、彼女は拾い上げて、そっと色どりを戻してくれた。∽∽その色どりたちは、彼の内がわで、しずかに... 2026.07.30 詩文
詩文 Boléro:Ravel ∽∽ドラムが執拗にリズムを繰り返す。射撃長が構えよと促す。銃身が乾いた音を立てる。鼓動が高まり、終わりが近づく。生命(いのち)が晒され、剥き出しになる。タクトが振り下ろされて、銃口が一斉に火を噴く。一瞬の静寂が、奏者と観衆を捉える。トロンボ... 2026.05.25 詩文
詩文 黒髪 ∽∽二十一のとき、ふたつ下の女性と暮らしていた。折れそうなほど細い、おとなしいひとだった。∽∽そのころの私は、受け止めたいものを、こちらからさし出すことを知らなかった。足りないものを世間のせいにしていた。就職の時期が近づいても、無いものを社... 2026.04.13 詩文