詩に眠る

詩文

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彼女はおとなしくて、口数が少なかった。

喋るのはたいてい彼のほうで、

彼女は黙って、ずっと聞いていた。

けれど、

言葉がうつむいて、

立ち止まってしまうと、

彼女は拾い上げて、

そっと色どりを戻してくれた。

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その色どりたちは、

彼の内がわで、

しずかにひろがり、

それから膝を抱えて、

小さく身体をまるめた。

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そうやって彼は、

ただ彼女のとなりにいた。

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彼女が居なくなって、

しばらくすると彼は、

いままでの毎日では、

要らなかった詩集を思い出した。

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ブレイク、ランボー、

イエイツ、コクトー。

本棚で埃を被って、

彼をずっと俟っていた。

昔のように彼は、

その頁たちに入ってゆこうとした。

けれどその言葉たちは、

彼の芯から、

すこし外れたところに、

刺さって落ちていった。

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だから彼は、こんどは、

彼女と出会うまえのノートを、

抽斗の奥から出して、眺めた。

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ノートには、

冷たく尖った孤独が、

そこらじゅうに充ちていた。

そうして、いたるところで、

かたくうずくまっていた。

彼にはもう、その言葉たちが、

手に入らなかった。

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だから、仕方なく彼は、

そのノートに、いまの言葉たちを、

継ぎ足していった。

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そのときだけ彼は、

彼女を忘れ、そうして、

彼女に出会えた。

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言葉の欠けらたちが、

あつまると、彼は、

なんども見返して見つめた。

それからベッドに入って、

仄かな灯りのなか、

その言葉たちといっしょに、

ひとりきりで眠った。

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