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彼女はおとなしくて、口数が少なかった。
喋るのはたいてい彼のほうで、
彼女は黙って、ずっと聞いていた。
けれど、
言葉がうつむいて、
立ち止まってしまうと、
彼女は拾い上げて、
そっと色どりを戻してくれた。
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その色どりたちは、
彼の内がわで、
しずかにひろがり、
それから膝を抱えて、
小さく身体をまるめた。
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そうやって彼は、
ただ彼女のとなりにいた。
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彼女が居なくなって、
しばらくすると彼は、
いままでの毎日では、
要らなかった詩集を思い出した。
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ブレイク、ランボー、
イエイツ、コクトー。
本棚で埃を被って、
彼をずっと俟っていた。
昔のように彼は、
その頁たちに入ってゆこうとした。
けれどその言葉たちは、
彼の芯から、
すこし外れたところに、
刺さって落ちていった。
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だから彼は、こんどは、
彼女と出会うまえのノートを、
抽斗の奥から出して、眺めた。
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ノートには、
冷たく尖った孤独が、
そこらじゅうに充ちていた。
そうして、いたるところで、
かたくうずくまっていた。
彼にはもう、その言葉たちが、
手に入らなかった。
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だから、仕方なく彼は、
そのノートに、いまの言葉たちを、
継ぎ足していった。
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そのときだけ彼は、
彼女を忘れ、そうして、
彼女に出会えた。
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言葉の欠けらたちが、
あつまると、彼は、
なんども見返して見つめた。
それからベッドに入って、
仄かな灯りのなか、
その言葉たちといっしょに、
ひとりきりで眠った。
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